随分、長い事ココは放置していて申し訳有りません。メインの居を移動したので、そちらに2年程前に書いた記事を転載しておきます。2013年6月30日の記事です。
この記事がグーグル等で検索しても全く出て来ないのは、掲載したブログからのPNG送信を切っている為で、色んな意味で発信を保護しなければ成らない事が多くなった為です。ネットの垂れ流しの世界に少々嫌気が差した…。そういう捉え方も出来ますがw
ええ、これは経験者がちゃんと書かなきゃいけないなと思ってたんですが、色々と忙しくてwズルズル先延ばしにしていたままです。ようやくヤリ過ぎで疲れ果ててしまって余裕が持てましたのでちゃんと書きますネ。
昨今、ソレは見苦しい、魚を余計に傷付けてる等の意見も多いのですが、多分にソレは感情論ではないか?と思えて成りません。
フックで魚を刺すのは良くて、クリップで口幕を破ってしまうのは良くない。ん?でも、同じ事じゃないの?と思える部分がある。シングルだろうが、トリプルだろうが、魚の体に刺す場所を予めコチラから選べる訳ではないという事、あらゆる可能性があって、例えば目に刺さってしまったり、ひっくり返って鰓側にフックが回って大量出血させたりする事も多分にあります。そのどれもが排除できない以上は、傷付けたから良くないとは言い切れません。
そういう風に成ってはいない魚を、単に見せる為だけにクリップで掴んで持ち上げて、口幕を破ってしまい、余計に傷付ける事は無いのでは?
ソレは判りますし、尤もな意見だとも判ります。
実は、私の経験から言うと、今まで散々スズキの口幕を破って来ました。それは、今あるフィッシュクリップの無かった時代の話です。
これは干潟でスズキを狙う時に使っていた【リリースギャフ】です。シーバステクニカルノート1に松浦氏が書いていた物や、IGFA記録を持つ山崎幸雄氏が雑誌中で使っていた物を参考にハンドメイドで製作した物で、ステンレス線を曲げて、柄には丈夫な樫や椎を使って、仲間用にも何本も製作しました。
先端は研いであり、鋭く危険なのでビニールチューブで保護されています。
使用時にはソレを外して、スズキの下顎に当て、手前に引き、ギャフを打ちます。これでスズキの口幕に穴が開いてしまいます。が、キープする事が多かったので、その後、ストリンガーを掛ける穴を兼用しているとも言えるので、リリースギャフという名前からは一寸逸脱してしまいがちではありましたがw
カメラを変えるとボケボケで手ブレが酷いですがご勘弁をw
何でこの様なモノが必要だったか?と言うと、危険なハンドランディングを避ける為です。掛かる魚は殆どが大型の物であり、それに首を振られて暴れられ、フックが指に刺さろうものなら、また延々干潟を歩いて戻って処置しなければ成りません、エイより危険な存在が、実はスズキに掛かったフックだったのです。
だから、下顎にギャフを掛けて、大人しくさせてから安全にフックオフさせる必要がありました。このリリースギャフは現在ではフィッシュクリップの登場で廃れてしまいましたが、JGFA理事であった松浦氏のチームスプラッシュのHPで今も見る事が出来ます。今更ですが、この形状は外れると書かれていたので驚きました。実際の使用感では外れるという事は一切無かったですし、その後暫くは磯でも使っていましたし。
ウェーディング中での事でも有り、魚を水から出す事も無かったので、ギャフを打ってフックオフして、リリースを決めたら、その場でギャフを斜め下に押してやればスッっと外れる構造ですので、蘇生の必要も無く、魚はそのまま帰って行きます。
自らの安全を図る為に、止む無く魚の下顎に穴を開けていたという理由になりますが、フッシュクリップの無かった時代で、どうすれば魚を安全にフックオフ出来るか?の方便をムックや雑誌で知る事が出来て良かったと思います。
ここで【教育】ってナンだろう?と思う訳です。
誰も教える人が居なければ、誰も学びません。見た、言われたそのままを素直にやってしまうのが大多数の人間で、それが最も楽な方法だからです。
では、スズキの下顎に穴を開けると、どういう事が起こるのか?
スズキは吸い込み型捕食です。餌と成る対象物の前で急激に口を開き、掛かっている負圧で対象物を吸い込んで捕食し、口中に残った水をまた鰓から排出して閉じます。この時に、口幕に穴が開いていたりすると、多少、或いは僅かに掛かる負圧の減少が有るでしょうね。
言うなれば、その分、その後に餌が捕り辛くなる可能性があるという事、エラアライする事で嘔吐もしますから、折角取った餌は栄養に成る前に吐き出されてしまって、胃の中がカラッポに成ってしまう事も多いですし、その後、餌が摂り辛く成る可能性を増やしてしまう事にも成りえます。今の時代はフィッシュクリップで吊るし上げて口幕に大きな穴を開けてしまうと、リリースギャフで作った穴より大きな穴が出来てしまいますから、その後の生存確率を下げてしまう可能性も無きにしも非ずです。
もし、リリース前提の釣りをするのであれば、フッシュクリップという安全で便利な物を使用しての【見せるだけの為に持ち上げて】ことさらに口幕に穴を開けるのは避けるべきでしょうし、単に【見せるだけの為に】そういう事を行ってしまう方は、【なんて雑な釣りをしているヒトなんだ】と思われても致し方ないという時代なのだと思います。
メディアの発達で、良い物も悪い物も雑多に垂れ流されてしまう時代です。クリップで下顎を貫通させてしまった魚を持ち上げて変顔でポーズして写真に納まり、それをメディアに配信すれば、それが格好良い事だと思うヒトも出てきますし、ちゃんと教える場や、学ぶという気持ちが無ければ、それが同様の人間に伝わってしまいます。
だからこそ、発信する側は言うに及ばず、受け手の資質が問われる時代でも有ります。
プロの××サンもそうしていたし、そういうのを見た。
だから、鵜呑みにして自分もそうして良いという事では有りません。残念ながら、真の釣りのプロは殆ど存在しないと言うのが私の実感です。釣る事や見せる事や売る事が多少上手なだけです。メーカーは売らんが為にどんな事でも仕掛けて来ます。そういう中にあるからこそ、釣った魚の処遇については、予め自分でちゃんと線引きしておかないと成らないと思いますね。
では、最後にちょっとショッキングな写真をお見せして終わりにします。
今年初めて釣ったスズキの拡大した写真です。唇は裂け、下顎の骨が露出した状態です。露出した下顎の骨は割れていてフッシュクリップが掛ける事が不可能でした。口脇にある傷からもそれほど前に釣られた魚ではない事が判りますし、むしろ、その傷は治り始めていますが、割れた下顎の骨は回復しないでしょうし、いづれ感染症に罹患して死亡するであろう事も想像されます。
釣りをする以上、こうしてしまう可能性は誰にでも充分にある。
それでも魚は【生きる為に餌を取る】という事です。逞しくも有りますが、悲しい事でもあり、それに関わっているのが【我々のしている釣り】なのです。
~終わり~