常識とは?

morimura1

2009年03月11日 23:06

この前の項のコメントにあります様に、読者の方から要望が寄せられました。


それから1週間、暇を見つけてはネット中色々探してみたのですが、
確たる証拠と言う物は見つかりませんでした。


意外さと共に、正直、ガッカリしたのですが、あえて、ここで不完全なまま寄稿する
のは、皆さんのご意見も伺いたいから、と、お考え頂けたら幸いです。



先ず始めに考えたのは、良く言われている事柄の1つの内の、



むやみに魚体に
触れてはいけない


と言う部分です。釣上げた魚の魚体に触れる事で、魚は変温動物ゆえ、恒温動物
である人間の体温との温度差で、細胞組織が低温火傷を負う、或いは体表を覆う
粘液を剥がしてしまう=感染症に罹患する恐れがあるから、触らないようにしようと
言う物です。ネット中にあるこの関連質問に対しての回答は、すべからく上記の様な
回答が寄せられています。



本当にそうなのか?先ず否定から始めなければ成りません。



残念ながら、私の調べた限りでは、明確に因果関係が示せる物はありません
でした。唯一はK-TEN開発者の二宮正樹氏のブログにある記事中の記述のみです。
この本は私も今でも保管しているのですが、著作権があるので掲載は出来ません
事をお許し下さい。従って、研究報告書の類や、学術書関係にまで手を広げない
と立件は難しい事柄なのかも知れないと思い始めている所です。


それは、魚体に触れた事で直ぐに死が訪れる様な事柄ではないからでしょう。
触れた事で、火傷を負って潰瘍になったり、或いは、感染症を引き起こすまで
には時間が掛かり、自然の中に放たれた物は追跡調査がほぼ不可能なのです。


例えば、その試験をするのには、先ず放流魚の確保→魚体に触る度合いを
様々に変えて触ってデーターを保管し管理→自然界に再放流する→再捕して
火傷や感染症の進行度を確認する。自然相手にはそれは無理です。また、
生簀や養殖された魚、観賞用飼育魚の場合は、自然とは全く異なる環境下でも
あり、我々釣り人が通常行っている事と照らし合わせると、参考には成っても
絶対ではないのです。


それどころか、もっと判らなくした事が、JGFAのタグ&リリースプログラムを
行っている方の再捕例写真では、魚を掴んでいる写真が複数見つかりました。
勿論、再捕時の写真を良く見たのですが、初回に釣上げた時に触れた部分を
見ても、感染症に罹患した様子も無ければ、低温火傷を負った様子もあり
ませんでした…。



魚に触れてはいけないと言うのはウソなのか?



それは多分ウソではないと思います。立件できる材料が見つからなかったので、
ここからはかなり憶測を交えた話に成ります。そして、話を絞り込む為にスズキ、
いわゆるマルスズキだけに限定した話にしますね。


魚体に触れる事で引き起こされる、低温火傷も、粘液を剥がす事による感染症も、


その可能性がある行為


には成り得ます。先ずは魚体を覆う粘液からです。


粘液の役目は、先ずは泳ぎ易くさせる為、次いで体の浸透圧調整や、雑菌などに
対する防御の為というのが挙げられます。

では、粘液が剥がれれば、非常に泳ぎにくくなってしまうかというと、そうでも有りません。
なので除外します。次いで浸透圧調整や、雑菌防御に対する抵抗力が失われる事が
第一の懸念事項なのですが、釣り上げ、暴れさせてしまう事自体が先ず自然ではなく、
そこから更にランディングネットで取ったり、陸の上に上げたり、魚体を持ったりすれば、
否応無く粘液は剥がれるでしょう。

ただ、剥がれたらそれで終わりではなく、粘液細胞から意外と早く補充されます。それと、
スズキは浅場に突っ込んで餌を捕食する性質もありますが、この時に魚体を擦って仕舞い
ます。腹側に擦り傷を持ったスズキを見た事がある人も多いでしょう。そんなスズキでも、
元気に餌を追っている位なので、少々粘液が剥がれただけで、直に感染症に罹患したり、
引き起こしたりはしないのではないか?と思われます。釣上げたダメージで弱っているのと
複合すれば感染という可能性も無きにしも非ずですが、多少の粘液の剥がれに対しては、
注意はしても、異常なほど過敏になる必要は無いと思います。



次は低温火傷ですが、此れが一番厄介でした。


よく出て来る比較には、水温15度の中に居る魚は、体温が水温と同等かちょっと高い
程度で生活している訳で、それを人間が直に触れば、その温度差は22度もあり、人間
で言えば、70度近いお湯のに中に入れられるような物だと言う事です。確かに70度の
熱を発する物に触れられても平気な訳が無いのですが、じゃあ、その接触時間や火傷
の進行度を示す資料なりは見つけられませんでした。ことスズキに関しては。


今の所、スズキに触った事で低温火傷を起こすとも、起こさないとも言えません。


前出、二宮氏のブログ中の記事のヒラスズキに手の跡が付いた写真とその魚について
なのですが、記事中にも有ります様に、魚種によっての差が大きくあるのではないかと
思います。皮下組織の耐性はその生息環境に拠る所が大きい。つまり、外洋性の海水魚
より、淡水魚が強いと言われるのはこの辺りではないかと思うのです。


常に大海を泳ぎ回る事が出来る魚は、環境が悪ければ直に移動する事が可能なので、
楽に遠くまで移動出来るスピードを持った代わりに皮下組織を鍛える必要が無かったの
でしょう。一方、生息水域が狭まれて行くに従い、激変する環境下でも生き延びる為には、
あらゆる事柄に対しての強靭な耐性を持たなければ成りません。また、更に絞り込んで、
閉鎖水域でも比較的安定した環境なら、耐性を持たなくとも生存は可能なので、そういった
種類の魚が繁殖できる訳です。一番過酷なのは、激変する環境下の閉鎖水域でしょう。


そんな耐性を持っている淡水魚の話をしますと、子供の頃に近くの池で雷魚を釣って
自宅の外にあった水槽の中に入れて置いた事があります。3ヶ月、餌もやらずに、
そのまま忘れて放置してました。何かの折に気が付いて、その水槽を開けてみたら、
水は半分に減り、完全に腐って異臭を放っていましたが、なんと、その中で雷魚は
生きていました。捕まえようとすると飛び出してきました。鱗は何かの病気に感染した
様で完全に白化して、さながら脱皮前の蛇の様でしたが、その下に完全な再生麟が
出来上がっていたのには驚きました。恐ろしい生命力だと感じましたし、子供心にも
これは戻すべきだろうと、釣った池に戻しました。



ヒラスズキはマルスズキに比べ、外洋性が強いですね、生息温度分布もマルスズキ
に比べて暖海性がありますし、意外とその範囲は狭いのです。そんな条件もあって、
マルスズキよりは肌が弱いとされ、あの様な事が起こるのでは無いかと思います。


マルスズキを位置付けるなら、一風変わった淡水(海水?)魚の枠に入れられるかと
思います。ご存知の通り、マルスズキは川を遡りますし、また、川を上がった個体は
体表の粘液が多いのも周知されている事かと思います。


意外と丈夫だけど、思っている程強くは無い


ちょっと曖昧かつ、乱暴ですが、そんな位置付けが適当かと思います。



しかし、いづれにせよ、魚を直手で持つのは余り良い事ではありません。魚種により
その差が大きいのは言うまでもありませんし、スズキも外海で釣れるのは粘液も
薄く、川で釣った物と同等に扱える物ではないでしょう。

また、感染症に罹患したら、回復する可能性は自然界ではほとんどゼロに近いのです。
飼育魚であれば、薬浴、淡水浴等々の治療法がありますが、それですら完治しない
場合もあり、釣り人として、感染症に罹患させる可能性のある事柄は避けなければ
ならないのは言うまでも無いでしょう。





一応、これでこの項は終わりにします。



捜索範囲を管理釣り場や飼育魚、活魚にまで広げれば幾つかの参考意見は有るの
ですが、魚種に対する差異や、飼育、生育状況が異なる為に、あえてそれらを考慮
には入れませんでした。


ご意見有りましたら、どうぞコメント欄に書き込んでくださいませ。



次回は魚の持ち方について予定しています。現在また調べている最中です。


記:森村ハニー


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