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2009年02月27日

弱り、そして迎える死

そろそろ春めいた陽気の日が多くなってきましたが、東京は今雪が降っています。
何年か前も2月の初旬は非常に暖かかったのに3月に入ったら途端に冷え込んで、
釣りどころではなくなってしまった記憶がありますが、如何お過ごしでしょうか?


アカデミー賞では日本映画の「おくりびと」が受賞しましたが、釣り人の多くがスズキの
「おくりびと」になってしまわない様にと願って止みません。


今回のテーマは弱った魚です。


スズキはどう弱って、どう死に行くのか?いわゆる野締めという、釣上げて放置したまま
にして、絶命する様を見た事がある人はそう多くないと思います。持ち帰りを決めた人は
大抵直ぐに絞めてしまったりしますね。一気に命を絶っているのと、段々弱って死に行く
のとでは全く違います。

釣って離しているという反復作業だけしかしていないと、離して泳いだのを見た事だけで
安堵して、その後は狙いたい次の魚に目が行ってしまい、離した魚のその後の行方は
もう頭の中には無い物です。そんなその後の魚の行方も追いたいと思います。



かなり昔の話ですが、私が小櫃川に行き始めた頃、大型のスズキを持って川から
上がって来たベテラン師に会いました。97cmのスズキの姿は、それまで港湾部で釣って
いたセイゴ~フッコとは全く別物の印象を受けました。まるで大型のハタ類の様でした。


ストリンガーに掛けて帰って来た頃はまだ元気で暴れていました。川の激流の中で
釣りをしていて疲れたらしいベテラン師2名でしたが、持ち帰ると言うその魚をその場に
放置して休憩をしていました。そのスズキが死に行く様を見ていました。


Red氏の記事の中に魚の目についての記述がありますが、まだ元気な内の魚は目に
生気があり、青物やマス類では下を向く様に目玉が動いていたりしますね。スズキは
こういう表情はほとんど見せないので、目玉の動きからその生気を余り感じる事が
出来ません。写真に撮られた魚でも余り元気が無いように見えるのはそのせいです。


陸に揚げて、暴れるのを止めた(その元気が失われた)後、段々と鰓の動きも無くなって
行き、数分後には体色が薄れていきます。私が見た多くは頭部から色が薄れて行き、
体全体が真っ白に近いほどに成ってしまいます。その頃にはもう胸鰭や背鰭を時折
ピクピクと動かすぐらいで、もう虫の息で、そのまま絶命します。

その後は30分から1時間ぐらい経つと、今度は黒に変わって行きます。完全に魚屋
で見るスズキの姿で、意外と黒いなと思った人も多いかと思いますが、これが大体の
スズキの死んだ状態です。マルスズキでは余りそんな反応を見る事が無いのですが、
ヒラスズキでは皮膚組織が全く異なるのか、環境やそのコンディションで体色を著しく
変化させます。これまで釣上げた物は、釣上げた時には白銀の様な色の薄い印象が
有りますが、殺すとみるみる黒くなっていきます。また、生きている内でもフックが
当たった箇所だけ黒く変色する事があり、鱗や皮はあんなに厚く硬いのに、意外と
デリケートな魚なんだなというのが判ります。


では、離されたは良いが、その後の魚はどうなっているのでしょうか?


嫌光性が基本のスズキは先ず明るい場所から離れて、安堵出来る暗い深みの方へ
行こうとします。流れに頭を向け、先ずそこで休憩します。全く微動だにせず、鰓だけ
動かして、呼吸だけしています。

私のケースでは、釣って潮通しのあるプールの様な場所へ離して置いたら、気が付い
たらその姿が無く、頭を突っ込んでライトで照らしてみたら、岩陰の暗い側の窪みに
身をピッタリと寄せて、呼吸だけして全く動いていなかったのを見た事があります。
この事からも、生きたままストリンガーに掛けて魚を繋いで置くのは、どれだけスズキ
にストレスを掛けている事なのか判ろうと言う物です。後でリリースするから、今は
繋いでいるという方が居ますが、それは絶対に止めて下さい。生存を願ってのリリース
とは言えません。


元気が残っていればやがて就餌行動をしますが、その時が何時なのかは魚の元気
次第で、前項でも書きましたが、やはり弱っている時期の魚ほどその回復は遅いと
言わざるを得ません。釣られた事で嘔吐もしていますし、腹の中はカラッポになって
いるので、より回復自体は遅れるでしょう。


弱っているのが長引くとどうなるでしょう?


東京湾内ではその姿を見た記憶が無いのですが、房総では良く見る物にスナホリムシ
という浜辺に多く生息する、ダンゴ虫の様な甲殻類に先ず狙われる事でしょう。夏の
浜辺の波打ち際を掘り返してみると、この甲殻類が2,3匹ササーっと泳ぐ姿を見る
事が出来るかと思います。時折、足に噛み付いたりする事もあるんですが、こちらが
それを追い払う事が出来れば、彼らもそれ以上は近寄ってきません。二宮正樹氏の
ブログにもある寄生虫とはこの虫の事で、寄生虫と言うよりは、海の掃除屋と言った
方が適切かと思います。

これは非常に恐ろしい生き物です。いや、恐ろしいと言うのは人間から見たらという
だけで、自然の摂理から言うと、地球に非常に優しい生物なのでしょう。


ヒラスズキを狙いに行った時に、まだ狙いの磯に入れる潮位ではなかったので、
隣接する小浜で肩慣らしに投げていたらヒラメが釣れました。これはいい土産が
出来たと思って、絞めずに、そのまま波打ち際から少し上に出来た潮溜まりに
ストリンガーに掛けて置いてたのです。

30分後にその場所へ戻ってみると、何やら小山のような物が動いているんです。
そのスナホリムシの山でした。動きを止められたヒラメに、ザワザワと襲い掛かる
何百匹と言うスナホリムシです。たった30分でこれだけの物が何処とも無く現れ
弱った魚に襲い掛かるのです。直ぐにストリンガーを引き上げ、ヒラメを確認しまし
たが、既に血の気が無く動きは止まっていて、口から鰓からそのスナホリムシ
溢れ返っていて、慌てて波打ち際へ行ってザブザブ洗いました。

再び確認してみると、周囲の鰭の薄い部分はほとんど食われボロボロ、体表は
鱗が剥ぎ取られた所から食われた跡が点々と、鰓穴から中を覗いてみると、鰓が
ピンク色で血の気がありませんでした。たった30分で、さながらピラニアです。

先ほどのその小山の場所へ戻ってみると、少しのスナホリムシが居るだけで
あれだけ集っていた姿は有りませんでした。


こんな風に掃除屋が居たりすると、余計に魚の死骸などは見つからないですね。
かえって、その死骸が流されていく姿を見ていた2項の方が、魚がどうなったのか
知る事が出来る事柄かと思います。





弱り、そして迎える死
ルアーを飲まれて出血しています。貴方ならどうしますか?


出血しているから持ち帰って食べる。それも手ですが、一寸待った!です。


出血が、即、致命傷になっているとは言い切れません。僅か数パーセントでも生存の
可能性があります。持ち帰ってしまったら生存の可能性を断ち、ゼロにしてしまい
ます。貴方の大事な人が何かの病で倒れ、僅か数パーセントしか手術の成功の
可能性が無いとしたらどちらを選びますか?迫られる選択はそれとなんら変わり
無い事なのです。人間が優れていて、地球の王者ではなく、これら別の命を持って
私達が成り立っているだけなのです。彼ら他の生き物が居なかったら私達の生命
も無いのと同じ。

いかに人間が知的生物であろうと、外部から見れば、地球上に存在する数多の
生き物と同じなのですよ。


しかし、どっちみち要らないから捨てると言うのと、生存の可能性に掛けるという
のでは全くその意図する事は違いますが、離す行為自体は端から見れば変わり
の無い事かもしれません。釣りは常にそういうリスクを背負って、またその選択を
迫られ、行っているという事を忘れてはいけないと思うのです。



記:森村ハニー



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